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【C88】トークイベント「TPPの著作権条項を考える ~非親告罪化、保護期間延長、そして法定賠償金~」の参加メモ

勉強会メモ コミックマーケット

コミックマーケット88の1日目に行われたトークイベント、TPPの著作権条項を考える ~非親告罪化、保護期間延長、そして法定賠償金~に参加してきました。

TPPの著作権条項により、コミケ等の創作活動に影響が出るのでは、という話は以前から聞いていたのですが、具体的に何がどう問題なのか、加えて、現状どういう議論になっているのかが分からない状態のままになっていました。ちょうど良い機会なので、このトークイベントで把握できた内容をメモにまとめておこうと思います。

自分で分かるようにメモをまとめただけなので、議論の順番が前後していたり、(自分の理解が足りず)内容が間違っていたりする可能性もありますのでご注意ください。

また、トークイベントの内容はニコニコ生放送タイムシフト再生で観ることができるようです。

このトークイベントについて

トークイベントのタイトルにもある通り、TPPの著作権条項として議論されている以下の3項目について、パネラーの方々を交えて意見をやりとりするトークセッションでした。

これらの項目について、TPPの現状と、どう問題意識を持っているか、どう考えるべきか、そして今後どう変わって行くかについてパネルディスカッションが繰り広げられました。

モデレーターは香月啓佑さんで、パネラーは以下の方々。

トークイベントはモデレーター、パネラーの方々の自己紹介を兼ねた一言コメントから始まり、TPPの現状、今後どう変わってゆくか、どう考えているかの話から始まりました。

  • パロディや権利者のお目こぼしによるファン活動が今までのように続けられなくなるのではないか、同人活動を萎縮させずに続けるにはどうするか、という点について問題意識を持っている。
  • TPPが妥結したら、次は国内法の整備という段階になる。その段階になると、TPP条文の拡大解釈を防止して表現の自由を守れるよう、国内の偉い人を説得する必要が出てくる。

TPPの著作権条項の各項目に関するディスカッション

次に、TPPの著作権条項で挙げられている各項目についてのディスカッションに入って行きました。

著作権の保護期間の延長について

  • 現状の日本国内における著作権の保護期間は、著者者の生前50年+死後50年の計100年間
  • 日本では2006年に著作権の保護期間の延長に関する議論があったが、2009年に保護期間の延長は一旦見送る形になっている
    • 著作権の保護期間延長について、日本はもともと延長反対の立場を採っている

著作権非親告罪化について

  • TPPのメニューに著作権侵害については「非親告罪化せよ」という項目がある
    • TPPは条約なので、法律よりも優先される
  • 非親告罪の対象になるのは、「故意に商業的規模で経済的利益を得るような」場合
    • そういう観点では、同人誌の頒布は対象になりそう
    • ただし、著作権非親告罪化については「著作権者の利用能力に影響を与える場合」に限って非親告罪を適用するという「セーフガード」を日本は要求している
    • 国内法でどういうセーフガードにするか、という議論は別途必要

法定賠償金制度について

  • TPP議論内容のリーク文書によると、法定賠償金制度については反対もなく取り込まれている模様
  • 賠償金の算出については、被害額を充分に保証できるくらいの額で計算されそう
  • 賠償金が高額になる傾向があるため、米国では「コピーライト・トロール」が問題になっている

同人活動からTPPの著作権条項に関連するあれこれを考える

トークイベントはコミックマーケット内のイベントとして開催されたこともあり、同人活動から見たTPPの著作権条項に関連するあれこれのディスカッションが行われました。

コスプレは著作権侵害に該当する?

コスプレで逮捕された事例は今までには無い。衣装の販売で逮捕された人はいるけれど、これは別の話。

コスプレが私的複製の範囲内かと問われると、大勢に見てもらうような場合のコスプレは私的複製の範囲から外れるかも。コスプレの元になった作品には著作権があり、これを衣服にした場合、著作権侵害なのかどうかの判断は「オリジナリティがあるかどうか」がポイントになる。

【個人的な感想】オリジナリティの有無が要点になるのは理解できますが、「何を持ってオリジナリティがあるか」と判断できる、あるいは主張できるかが個人的に理解しきれていないです。布団にくるまって「ぷよぷよのコスプレ」とした場合は、オリジナリティがあるのだろうか(キラリと光るセンスはありそうだけど...)。

中川さんがコスプレを見て回った際の感想としては、著作権侵害にならないものが多い、という印象を受けたとのこと。

二次創作について

現状と著作権非親告罪化について

現状の同人活動を考えると、グレーゾーンな部分がある。ただし、著作権者が二次創作についてOKを出しているような場合は、検察が起訴するようなことは無いはずで、その観点では非親告罪化についてはあまり心配する必要はなさそう(著作権者がOK出してるワケですから)。

ただ、怖いのは第三者による通報のような「嫌がらせ」を目的とした行為が行われる可能性があるという点。行政はクレームに弱い傾向があるらしく、数百件くらいのクレームで折れてしまう(イベントを中止したり等)ことがあり、こういった嫌がらせ目的の通報等に対抗できるような明文化は必要かもしれない。

明文化といっても、著作権的にセーフかアウトか、という話に留めるべきで、同人誌そのものがセーフ、アウトか、という議論は混ぜるべきではない。

【個人的な感想】言われてみれば当たり前なのですが、著作権的な話と同人誌の是非に関する話は分けて考えるべし、というのは盲点でした。議論の際はこの分けて考える認識がないと、話がかみ合わないことがあるかも。

著作権者が訴えた例としては、任天堂コナミのケースがある(ポケモンときメモの話?)。とはいえ、赤松さんの弁によると、著作権者が訴えるのは考えにくいとのこと。そもそも描いてくれたら嬉しいので、ファンを攻撃するようなこと(訴える等)はしないよね、という話。とはいえ、「著作権を相続した遺族の方から訴えられるかも」という意見もでていました。

【個人的な感想】赤松さんの「描いてくれたらうれしいもん!」という熱い一言はグッとくるものがありました。著作権を相続した遺族が訴えるかも、という話はたしかに懸念事項ですね。著作権著作者人格権(譲渡できない)と財産的な権利(譲渡できる)に分けられるはずで、遺族が著作権を相続する場合は「財産的な権利」のみになるのかなと思います(ここらへんちゃんと理解できてない...)。そうすると先にあげた「『著作権者の利用能力に影響を与える場合』に限って著作権非親告罪を適用」というケースに当てはまりそうな心配がありますね。

現状での著作線侵害のセーフ、アウトの線引きはどこ?

中川さんがコミケの島めぐりをして、どの辺りが危ないかについての解説。一見してアウト、セーフが判別できるものがあり、判断基準は「著作権者の絵をそのまま使っているか」。「絵が似ているか」で、例えば、TVのキャプチャをそのまま使っているのはマズいとのこと。絵が似ているかについては、似ていなかったらそもそも著作権侵害が成り立たないよね、という話。つまるところ絵のウマい・ヘタ論になってしまうも、著作権侵害だ!と言われた場合に、その判断(絵が似ている似ていない)を警察等の機関が正しく行えるかは疑問が残る。

【個人的な感想】確かに、絵が似ている、似ていないを第三者が判断する状況下で正しく判断してもらえるかは心配の種として残りますね。例えば、リゼ(ご注文はうさぎですか?)と胡桃(がっこうぐらし!)は同じキャラでしょ、と言われるとどう説明したものやら...。

二次創作小説について

二次創作小説については、マンガと比べて著作権侵害と判断されにくい。作品のキャラクターやアイディアを借りてくるだけであれば著作権侵害ではない、しかし、作品内のセリフをそのまま使うとアウト。「引用」の範囲であると判断できそうだけれど、先の例にあった本の表紙にTVのキャプチャを使うのはマズい。

ガイドラインもの」について

初音ミク艦これ等に見られる二次利用許諾の形態、いわゆる「ガイドラインもの」については、(当然ではあるが)ガイドラインに従って同人作品を作るのはなんら問題無い。このガイドラインものに加え、著作者への確認の制度をルール化するのが良い方法かもしれない。

【個人的な感想】ガイドラインによる二次利用許諾という方法は賛成ですね。すでに同人マークで二次創作と同人誌の配布の許諾意思を原作者が明示的に示すという流れがあります。ただ、原作者が二次創作OKとしていても、出版社が許可しない、という状況もありえるのだろうか?という疑問が新たに湧いてきてしまいました。このあたりは、「原作者、出版社、許諾形態」の形で星取り表があったりすると分かりやすいのかなと思います。

我々はどうするべきなのか

TPPで著作権の扱いが変わることによる、「(創作活動の)萎縮への対策」と「第三者の悪意ある通報への対策」を考えないといけないという話。TPP著作権条項にまつわる問題点については、政府側でも問題は共有されつつあるとのこと。

【個人的な感想】国会中継とかはあまり見たりしない(逆に国会中継を欠かさず観る!という人はいるのだろうか...)のですが、このメモをまとめるにあたり、国会議事録検索システムの存在を知りました。定期的に議事録内を「著作権 TPP」といったキーワードで検索することで、議論の状況を追跡できそうです。

この話をしている途中で、山田太郎さんから飛び入りでの補足があり、TPPの非親告罪化については大丈夫だと思う、政府が本当に規制したいのはエログロやゲームの暴力表現である、という補足説明があった。

【個人的な感想】SFCストIIで2コンのスタートボタンを押したのか!と思うくらいの飛び入りっぷりでした。

我々はどうすべきなのかについては、TPPの著作権条項により、即座にコミケ潰れるようなことはないが、安心しすぎるのも良くない。また、ひとつのジャンルに限らず見て行くのが大事という話がされていました。加えて、若い人も政治に関心をもった方がいいよね、という(良い最終回だった的な)話の締めくくりになっていました。

【個人的な感想】個人的に政治に関心をという話は大仰かなと思うところもありますが、著作権まわりの現状とこれからについては、同人活動に関わるなら少なくとも自分の意見を持てるくらいじゃないと足元が危ういという気がしています。そのためには現状の理解が必要で、こういったトークイベントはとても勉強になります。

まとめ

このトークイベントにより、TPPの著作権条項の議論のポイント、現状についてある程度把握できました。これを踏まえて今後の議論や法律面から著作権の話、創作界隈にどう影響してくるのかを掘り下げて理解して行ければ良いなと思います。

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