クマ研講演会~みんなの知らない野生動物の世界~(2019)に参加してきました

岩手大学 Advent Calendar 2021 2日目の記事です。今日は以前に岩手大学で開催された「クマ研講演会~みんなの知らない野生動物の世界~」という公開講座に参加した時の話をしようと思います。

クマ研講演会

少し前の2019年11月の話になりますが、岩手大学で「クマ研講演会~みんなの知らない野生動物の世界~」という公開講座が開催されました。面白そうな講演会であったため、ふらりと参加してみました。

クマ研講演会に向かう

クマ研講演会は2019年11月16日(土)の13:00開始であったため、まずはお昼ご飯をすませてから会場に向かうことにしました。 お昼は中津川の近くにある中河(なかがわ)に立ち寄ってみました。メニューはラーメンだけという昔ながらの硬派(?)なお店でです。 (残念ながら、当時の段階で店内での撮影はNGになっていました…)

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あとはそこから会場の岩手大学まで散歩を兼ねて歩きます。運の良いことに中河から通りに出た道を道なりに歩いてゆくと岩手大学に辿り着けるようです。

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岩手大学に着いた後は講演会の案内ポスターを頼りに会場に向かいます。

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岩手の森のけもの達~その生息の実態は今~

公開講座の内容はいくつかあったのですが、今回のその中の「岩手の森のけもの達~その生息の実態は今~」の紹介をしようと思います。

岩手県に生息する野生動物(哺乳類)は45種類あり、以外(?)なことに一番多い種類はコウモリ目とのこと。 (てっきりクマかシカ類が多いのかなと思っていました…) そして参考までに、鹿児島県の場合は39種類とのこと。

野生動物 種類 備考
モグラ・トガリネズミ目 7種
ウサギ目 1種
ネズミ目 8種
コウモリ目 17種 13種がレッドデータ種になっている
サル目 1種
食肉目 8種
ウシ目 3種

また、市街地でよく見かけるのは「アブラコウモリ」という話でした。

コウモリの話

コウモリは大食漢?

コウモリ目が一番多いという点から、コウモリの習性について解説されていました。

コウモリは大食漢であるらしく、例えばユビナガコウモリが住処の洞窟からエサを採りに出かける前(出洞前)の体重は13gほどでありながら、帰って来た時(帰洞後)は16gになっていたり、ドーベンコウモリの例では7g~12gの変動幅で、最大8gのユスリカ捕食例もあるのだとか。この大食漢っぷりは、計算上だと体重45gのヤマコウモリが400匹分のタマバエ(20g)を捕食できることになり、ヤマコウモリが50匹いたら、一晩に20,000匹のタマバエを捕食できるという計算になります。

これはコウモリ目が昆虫類の大量発生抑制に多大な貢献を果たしているという話でもあり、健全な農林業への大きな役割を果たしているとも言えます。 日本では試算されていないとのことですが、アメリカの試算では農業被害軽減効果は最低でも年37億ドル(4000億円)にもなるとのこと。

コウモリの保全に関する課題

ところが、日本においてはコウモリの保全に関する課題は山積みとのことで、森林性コウモリの場合は繁殖・休息場所の減少が挙げられます。これについては、例えば乗鞍高原にバットハウスがあったりします。 また、トンネルの改修等で天井をツルツルにしてしまうとコウモリがつかまれなくなってしまうため、「コウモリピット」を設置して止まりやすいようにしたりしたり、メッシュタイプのコウモリピットを用意したりするとのこと。 そして、欧米はコウモリ保全の先進国とのことで、イギリスではコウモリが屋根裏に入りやすいように出入り可能な瓦が販売されているのだとか。

加えて、クリーンな発電方法として風力発電が挙げられますが、バードストライクと同じく、バットストライクも風力発電の進展と共にコウモリの保全に対して深刻な影響を与える可能性が考えられるというお話でした。 (全てにおいてベストな解決策というものは存在しないという話ですね…)

岩手県で近年問題になっている動物たち

ハクビシンの話

コウモリの話の次は、岩手県で近年問題になっている動物たちの解説が行われました。 ツキノワグマによる被害はニュースでも耳にするのですが、それ以外の動物による被害はあまりニュースにはなりませんね…。

まずはハクビシンの話がありました。どうやらハクビシンは甘いものが大好きで何でも食べ、しかも昆虫、ニワトリ、カエルなど何でも食べる悪食(?)とのこと。はては里芋の芋がらまで食べるらしく、食べ物の半分は人間由来のエサになっているとのこと。 さらに、人間由来の資材、廃屋などがハクビシンの格好のねぐらになっており、例えば古い神社のお社などがねぐらになっているというお話でした。

ツキノワグマの話

ツキノワグマの話もあり、今年(当時は2019年)も出没・駆除が頻発しているという話でした。 岩手県は広いというか、東西に大きな山脈が分かれており、同じ岩手県でも、北上高地と奥羽山地でツキノワグマに遺伝的な差があり、北上高知(北上山地)ではアルビノのクマの発見率が多いとのこと。 また、クマは蛇が嫌いらしく、どうやらこれは本能的な習性ではないかとの解説がなされていました。 ニュースを見ていると、頻度の差はあれ定期的にクマのニュースが出ているという印象はあり、特にブナが不作の時にはクマが多く出てくる気がしますが、実際のところ、東北でクマの駆除が多いのは夏(7~10月)であり、この季節はブナの実はなっていないため、別の要因ではないかとの話でした。 (講演者の方が「これは別の機会に…」と話されていたので、次回のクマ講演会が待たれるところです) そして、クマに縄張りはあるか?という話があり、クマの行動圏は重複しているため、一頭駆除しても代わりがたくさんいる、なので駆除したから即安心、という話でもないとのことでした。

昨今の農業就業者数の減少により、畑が廃棄されるケースが増えており、廃棄された畑はすぐ荒れてしまいバッファゾーン(※)ではなくなってしまうので、クマが通れるようになってしまう。 ※:農道等で道ができていると、クマは緑が無いところを警戒して道を横切って超えてこない、という話でした。

結局のところ、クマの駆除だけでは被害はなくすことはできず、森の整備、そしてクマを里に誘因する原因の除去など「総合的な施策」が欠かせないという話で解説が締めくくられていました。

まとめ

「クマ研講演会~みんなの知らない野生動物の世界~」の公開講座メモをまとめてみました。2019年に開催された際にメモを取っていたのですが、だいぶ長らく手元にしまい込んでいたため、今回改めてメモを整理して公開してみました。 他にも面白い話がいろいろとありましたので、またメモが発掘されたら公開するとともに、次回のクマ研講演会の開催を心待ちにしたいと思います。